唐変木のためのガイダンス

バツイチ・卵巣がん闘病中・統合失調症・ADHD診断済・交際相手有の50代前半女性の日記。

訃報。

 昨日の深夜に店員さんと客の関係から友人になった都内某所にある文筆・出版・マスコミ・学術関係者御用達の喫茶店の女性看板店員さん(以下彼女)の個人アカウントのツイートで、内縁のご主人が亡くなられたことを知る。

 
 内縁のご主人と彼女は年齢が離れていた。内縁のご主人は某全国紙の記者をされていたが、20代後半からがんを患い闘病しながら仕事を続けられていた。しかし、4年ほど前に病状が悪化して退職。その後は新聞記者時代に培った人脈をもとに、フリーライターや大学や専門学校や文化センターの講師をされていた。
 体調がいい時は、彼女が友人と共同経営していた件の喫茶店のカウンターに立たれていた。 
 ご病気の関係かやせられていたが物静かな山羊の校長先生といった感じの博学な人で、お店の人気者だった。
 でも、マナー違反の客には毅然とした対応を取るかっこいい方。
 コーヒーに一家言ある方だったが、残念ながら私はカフェオレや豆乳ラテ以外のお湯や水で入れたコーヒーを飲むと胃に激痛が走り気分が悪くなる体質なので彼女の内縁のご主人が入れたコーヒーを一度も飲むことはなかった。しかし、世界史や文化人類学民俗学につながるコーヒーの雑学を楽しく聴いていた。
 昨年春に私が卵巣がんを再発させた時に彼女に、「ウチの連れ合いも30年以上がんとつきあってるから。」と笑顔で肩を叩かれて励まされた。どんな気持ちで彼女がそのようなことを言ってくれたのかを考えると胸が苦しくなる。
 
 2017年の夏頃から彼女はお店に出る回数を減らして、家の中でできる文筆業にシフトしていた。
 私は「彼女は文才があるから。」と軽く考えていたが、今にして思えば内縁のご主人の病状のことが大きかったのだろう。
 私も今年初めに体調を崩して入院したこともありあまりお店に行けなくなったが、私より古い常連の徳さんから彼女がお店に出なくなったことを聞いた。
 お店のTwitterアカウントで店主から、「彼女は人生の一大事がありしばらくお店には出ません。もし出ることがあったらその時は告知します。」とツイートが。お店と常連をつなぐLINEでは「彼女の内縁のご主人の容態が思わしくないので、在宅の文筆業に移行している。」とはっきりと事実が書かれていた。
 
 2週間ほど前の彼女のTwitterの個人アカウントで、「都内の大学病院で痰の吸引の指導を受けた。看護師さんに褒められた。うれしかった。」という内容のツイートや、介護用のベッドのリース搬入や訪問医療のツイートが増えたことで、内縁のご主人の状態がシビアなことを悟った。
 私の父方の祖父は14年前に悪性リンパ腫で亡くなった。病院での最期を拒んだため父が訪問医療と住み込みの看護師を手配して、名古屋市内の自宅で最期を迎えた。
 そんなことを考えて、彼女のことを気にかけていた。
 内縁のご主人の在宅医療に関するツイートの後、彼女のツイートは激減。
 そして、訃報ツイート。
 
 私の母方の祖母は事情があり30年近くある男性と内縁関係を続けて両親も私もゴタゴタに巻き込まれ続けたので、彼女が通夜や告別式や火葬の場に立ち会えるのだろうか?とか相続の問題は?とか他人が要らんことを考えてしまった。
 
 交際3ヵ月半で言うべきことではないかもしれないが、徳さんも私も再婚の意思はない。
 もし私に万が一のことがあった際に徳さんとの交際が続いていたら、病院側は徳さんを立ち会わせてくれるだろうか?
 入籍していなかったら家族として認められずに、婚約者だと言っても病院側から立ち会いを拒否されるケースもあると聞く。
 まあ、コロナウイルス禍が収束しない限りはいまわの際の多人数の立ちあいは難しいだろうが。
 
 亡くなられた彼女の内縁のご主人は実は徳さんと私の恋のキューピッドだったりする。
 徳さんは大学院生時代に編集アシスタントのアルバイトしていた出版社の先輩に連れられて、この喫茶店の前身のお店を訪れて以来のつき合いだと話してくれた。
 その時のマスターが17年前に急死された後ビルのオーナーから立ち退き要請があったこともあり、彼女を含めた店員さん達が店舗を移転して店名を変更して経営を続けているとのことだった。
 私は7年前にある文学賞で最終選考まで残った際にお世話になった編集者さんに連れてきていただいて、このお店の常連になった。
 徳さんは彼女の内縁のご主人の大学・学部の後輩だということもあり、かわいがっていただいていた。
 確かに彼女の内縁のご主人や徳さんの出身大学は、マスコミや学術関係者が多い。
 徳さんと私はこの喫茶店の常連だという共通点から、友人時代により距離が近づいた感がある。
 
 私が彼女の内縁のご主人に最後にお会いしたのは、昨年の10月末。
 月末月初計6日の雇用契約社会保険労務士事務所のパートの帰りに徳さんと待ち合わせて、二人で件の喫茶店に足を運んだ時。
 体調がいいからと、久しぶりにカウンターに立たれていた。
 当時私は元夫と離婚前提で別居中。再発したがんを抱えて今後どう生きていけばいいか考えている最中。
 彼女の内縁のご主人に、「あいちゃんは今までよく頑張ったよ。」、「結婚だけが人生じゃないぞ!」とか「徳さん、あいちゃんとつき合っちゃえよ!」と言われていた。
 彼女の内縁のご主人の言葉から約4ヵ月後に、本当につき合うことになろうとは。
 人生って不思議。
 彼女の内縁のご主人に感謝しなければ。
 
 彼女が内縁のご主人に私と徳さんが交際するようになったことを話したところ、「あいちゃんが今度こそ幸せになれるといいな。徳さんなら幸せにしてくれる。よかった。俺は思い残すことはない。」と言ってくださったそう。
 今、この言葉の重みを心から感じている。
 
 彼女の内縁のご主人、長い長い闘病生活お疲れ様でした。
 徳さんと私の縁をつなげてくださりありがとうございます。
 私より年下なのに大変な介護を続けた、彼女もお疲れ様でした。
 いろいろなことが落ち着いたら、またお店のカウンター越しに歯切れのよい小倉弁のトークを聴きたいです。
 今はとにかくお家に一緒に居る猫さんと心と身体を休めてください。